創作小説

   黒鴉将軍コルヴィヌス外伝 盗賊と紋章

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 アスジーナ大陸は、まず二分される。神の住まう地と、人が生きる地である。
 死の山峡と呼ばれるディーナ山峡より北方は、神の住まう地。人は死を迎えるとその魂だけを持って北の神地に永住できると信じられている。ゆえに、死は『北に旅立つ』と表現されることもある。
 ディーナ山峡の南こそ、人の生きる地である。
 山峡から南方に向かってツララのように長く延びる山脈が二つある。一つはカルナ山脈。もう一つは、メデナ山脈。その二つの山脈から流れ出る幾つかの川を源流とする、大陸を東西に二分して流れる河が、神の慈悲の涙と呼ばれるビュー河。
 これから語るべき物語の時代においては、その三つの山河をもって地は、さらに三分される。
 カルナ山脈とビュー河より西を領地とする大国。四つの都市国家から成る連合国家フォンサリス。
 メデナ山脈とビュー河より東を支配する大国。神の血を受け継ぐ者として、ただ一人の皇帝をかつぐカルディーナ帝国。
 そしてカルナ山脈とメデナ山脈に挟まれ、南をビュー河に接する小さな国家。
 それが、建国してまだ百年に満たないタリムーラ公国である。

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